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複数の鋼管・角形鋼管・鋼板サンプルの写真と、グリーンスチール調達の7項目を示すメインビジュアル

グリーンスチールを調達する前に確認したい7つの項目

2026.08.24
グリーンスチール・GX

グリーンスチールの調達では、環境性能の説明だけを確認しても発注できません。使いたい鋼材の規格・寸法・加工・品質を満たすこと、必要な数量と時期に届くこと、受け取った証書やCFP情報を自社のScope3や製品説明へ正しく引き継げることが必要です。

見積依頼の前に確認したい項目は、次の7つです。

項目決めること主に関わる部門
1.導入目的Scope3、製品CFP、顧客要求など、何に使うか環境、経営企画、営業
2.呼称と対象何を根拠に、どの製品をグリーンスチールとするか環境、購買
3.反映方式削減証書を使う方式か、低い製品CFPを使う方式か環境、購買
4.証憑と検証対象製品・数量・期間・第三者検証をどう確かめるか環境、品質
5.鋼材仕様品種、規格、寸法、加工、表面、品質書類設計、品質、購買
6.供給条件数量、ロット、納期、分納、物流、価格条件購買、生産管理
7.受入後の運用証憑照合、算定、表示、保管、引継ぎ購買、環境、営業

この7項目を、環境条件、鋼材条件、運用条件の三層でそろえると、「環境面では合うが製造に使えない」「購入したが削減根拠を社内で使えない」といった手戻りを防ぎやすくなります。

なぜ7項目を一組で確認するのか

グリーンスチールという言葉は、低炭素化された鋼材を広く指す場面で使われます。しかし、どの排出をどの方法で小さくしたのか、削減価値を証書で受け取るのか、製品のCFPへ反映した数値を受け取るのかは、供給方法によって異なります。

一方、鋼材の採用可否は、環境情報だけで決まりません。構造用の角形鋼管、配管用炭素鋼鋼管、鋼板、形鋼などでは、規格、寸法、材質、機械的性質、加工、表面処理、検査書類が用途に合う必要があります。環境価値があっても、設計条件を満たさなければ代替できません。

さらに、調達した後の扱いまで設計対象です。証書の対象数量と納品数量が一致しているか、どの案件・製品へ使用したか、自社のScope3や製品CFPでどう扱うか、顧客へどの表現で説明するかを決めておかなければ、価値を正しく引き継げません。

したがって、調達判断は次の三層で行います。

  • 環境条件:目的、呼称、方式、証憑
  • 鋼材条件:品種、規格、寸法、加工、品質、供給
  • 運用条件:納品との照合、算定、表示、記録、次工程への引継ぎ

ここからは、7項目を一つずつ見ていきます。

1.導入目的と利用場面

最初に、「グリーンスチールを購入すること」ではなく、「購入後に何の判断や説明へ使うか」を決めます。目的が違えば、必要な方式、証憑、社内確認が変わるからです。

主な利用場面には、次のようなものがあります。

  • 自社のScope3カテゴリー1を削減・管理する
  • 特定製品のCFPを改善する
  • 顧客から指定された低炭素材の調達条件へ応える
  • 調達方針や削減目標に沿う案件を増やす
  • 製品・サービスの環境情報として顧客へ説明する
  • 実証案件や限定製品から段階導入する

「Scope3へ使う」と決めた場合でも、組織全体の年次集計で使うのか、特定の部門・製品群の改善へ使うのかで必要な管理粒度が変わります。製品CFPへ使うなら、対象製品の機能単位や算定範囲と、購入する鋼材のCFP情報を照合します。

顧客要求への対応であれば、顧客が指定する定義、算定ルール、証憑、対象期間、表示表現を先に入手します。自社が妥当と考える方式でも、顧客の調達基準が別の方式を指定していれば、その案件では使えない可能性があります。

必須条件と希望条件を分ける

目的が複数あると、すべてを一つの調達で満たそうとして条件が膨らみます。見積前に「必須」と「希望」を分けます。

たとえば、顧客指定の証憑と規格適合は必須、Scope3への利用は必須、製品サイトでの表示は希望、初回は一部数量だけでも可、という分け方です。供給者は代替案を出しやすくなり、社内でも採用判断の優先順位が明確になります。

2.呼称・対象製品・算定範囲

次に確認するのは、「何を根拠に、どの製品をグリーンスチールと呼ぶのか」です。グリーンスチールは広い呼称であり、供給者や制度によって定義、対象範囲、削減価値の持たせ方が異なる場合があります。

日本鉄鋼連盟は、ガイドラインに基づく「GXスチール」を、鉄鋼メーカーの温室効果ガス削減効果を特定の鋼材に反映したものと説明しています。これは、単に再生材を使った鋼材、電炉材、再生可能エネルギーを利用した鋼材などの一般呼称と、必ずしも同じ意味ではありません。

供給者へは、商品名だけでなく、次を確認します。

  • 適用するガイドライン、方法論、制度名
  • 対象となる鉄鋼製品と製造者
  • 算定対象となる工程・組織の範囲
  • 対象年度またはデータ取得期間
  • 削減価値を製品へ反映する方法
  • 受け取る情報が証書かCFPか

同じ鋼材か、環境価値を付けた鋼材か

調達担当者が混同しやすい点は、物理的な製品属性と環境価値の関係です。マスバランス方式では、削減実績量を組織内で管理し、任意の製品へ配賦する仕組みを使います。そのため、「購入した現物が専用炉で別に製造された」という意味とは限りません。

現物の製造履歴を分離する考え方と、組織内で削減価値を管理・配賦する考え方は異なります。調達仕様書には、現物へ求める鋼材条件と、環境価値へ求める条件を別欄で書く方が誤解を防げます。

3.GX価値の反映方式

日本鉄鋼連盟のGXスチールには、GXマスバランス方式とGXアロケーション方式があります。どちらも鉄鋼メーカーの削減実績を扱いますが、購入者が受け取って利用する情報の形が違います。

確認軸GXマスバランス方式GXアロケーション方式
基本的な考え方組織内の削減実績量を任意の製品へ配賦削減実績量の範囲で製品の排出量を配分
主な受取情報製品と削減証書配分後の低い製品CFP
購入者側の主な利用Scope3カテゴリー1や製品レベルの上流排出量削減の主張に証書を利用提供された製品CFPをScope3カテゴリー1や製品レベルの算定に利用
確認の中心証書の数量、対象、移転、利用条件CFPの機能単位、境界、期間、配分、利用条件

GXマスバランス方式で見ること

削減証書を受け取る場合は、証書がどの製品・数量に対応するか、単位は何か、対象期間はいつか、誰から誰へ移転するかを見ます。自社で使用した後、サプライチェーン後段の顧客へ引き継ぐ場合は、引継ぎ可能な情報と、自社に残す記録を決めます。

証書の削減量を、同じ数量へ二重に使わない管理も必要です。複数製品へ分割する、複数顧客へ販売する、在庫として年度をまたぐといった運用では、受け取った量、使用した量、残量を追える台帳が欠かせません。

GXアロケーション方式で見ること

低いCFPを受け取る場合は、その数値の単位、対象製品、算定範囲、データ期間、配分方法、適用期間を見ます。自社の製品CFPへ組み込むなら、自社が採用する算定ルールと境界との対応を照合します。

数値が低いという一点だけで選ぶのではなく、何を含むCFPかを比べます。原料採掘から鋼材製造までなのか、追加加工や輸送を含むのかが異なれば、数字をそのまま横並びにはできません。

4.証憑・第三者検証・数量対応

環境価値を説明するための書類は、名称より中身を見ます。削減証書、CFP報告書、EPD、検証報告書など、提供形式は案件によって異なります。

最低限、次の項目を照合します。

  • 発行者と供給者
  • 対象製品・製品群
  • 対象数量と単位
  • 算定・削減の対象期間
  • 算定範囲
  • 削減量またはCFP値
  • 適用したガイドライン・方法論
  • 第三者検証の有無と検証範囲
  • 証書番号などの識別情報
  • 有効期間、移転、分割、使用後の扱い

第三者検証がある場合も、「何が検証されたか」を見ます。削減プロジェクト、削減実績量、製品CFP、配賦・配分の管理など、対象範囲が異なるためです。検証済みという一語だけで、自社が行うすべての表示や算定が自動的に認められるわけではありません。

現物、納品書、証憑を結び付ける

発注時に環境価値を指定しても、納品後に証憑と現物を結び付けられなければ、社内利用が難しくなります。発注番号、納品書、品種、規格、数量、ロット、証書番号またはCFP文書を対応付けます。

加工や分納がある案件では、元の購入数量が複数の納品・製品へ分かれます。どの数量へ環境価値を割り当てたかを記録し、合計が受領量を超えないようにします。販売先へ情報を渡す場合は、渡した数量と日付も残します。

5.鋼材としての仕様

環境条件を満たしても、必要な鋼材として使えなければ採用できません。見積依頼では、通常鋼材と同じ水準で仕様を提示します。

主な確認項目は次の通りです。

  • 品種:鋼板、鋼帯、形鋼、丸鋼管、角形鋼管など
  • 規格・種類記号:適用するJIS等と材質
  • 寸法:外径、辺寸法、厚さ、幅、長さ
  • 数量と単位:本数、枚数、重量など
  • 加工:切断、穴あけ、曲げ、開先、溶接等
  • 表面:黒皮、酸洗、めっき、塗装等の条件
  • 品質・検査:ミルシート、検査証明書、追加試験
  • 用途・使用環境:設計者が判断するための前提

「同等材」でよいかを先に決める

供給可能なGXスチールが、既存仕様と完全に同一とは限りません。メーカー、製造法、寸法範囲、ロット、加工可否が変わる場合に、どこまで同等材を検討できるかを設計・品質部門と決めます。

調達担当者だけで材質や規格を置き換えてはいけません。構造用途、圧力用途、顧客図面指定などでは、変更承認が必要な場合があります。代替候補を受け取ったら、環境情報とは別に技術承認を行います。

加工後の管理も確認する

鋼材を切断・曲げ・溶接・めっきして納品する場合、加工で品名や数量単位が変わります。元材の証憑を加工品へどう引き継ぐか、加工ロスをどう扱うか、分割後の数量をどう記録するかを決めます。

環境価値の証憑と、品質証明のミルシートは目的が違います。どちらか一方で代用せず、必要書類を分けて指定します。

6.数量・納期・商流

グリーンスチールは、必要数量と供給時期を早めに確認する方が安全です。通常材と同じロット・納期・在庫条件で調達できるとは限らないためです。

確認したい供給条件には、次があります。

  • 最小ロットと注文単位
  • 希望数量と環境価値を付けられる数量
  • 一括納品か分納か
  • 希望納期と回答期限
  • 継続供給の可否と確認時期
  • 在庫材か受注手配か
  • 加工・検査に必要な日数
  • 納入場所、荷姿、輸送条件
  • 通常材へ切り替える場合の判断期限

初回導入では、全量を一度に切り替えず、限定製品、特定顧客向け、一定数量から始める方法があります。品質・生産・証憑管理を試し、運用上の課題を確認してから範囲を広げられます。

価格は同じ比較条件で見る

価格を比較するときは、鋼材本体、GX価値、加工、検査、物流、証憑対応などの範囲を合わせます。通常材の見積が素材のみ、グリーンスチール側が加工・証憑込みなら、総額だけでは差の理由が分かりません。

価格の有効期限、数量条件、分納条件もそろえます。環境価値の費用だけを切り出せるかは供給条件によるため、見積の内訳と前提まで読み合わせます。

商流上の引継ぎを確認する

鉄鋼メーカーから最終使用者までに、商社、加工会社、物流会社などが入る場合があります。証憑を誰が受け取り、加工後の製品へどの情報を付け、最終顧客へ誰が渡すかを決めます。

物の流れと書類の流れが一致しないこともあります。発注前に商流図を一枚作ると、証憑が途中で止まる、数量対応が分からなくなるといった問題を見つけやすくなります。

7.受入後の算定・表示・保管

最後の項目は、納品された後の運用です。ここを発注前に決めておかないと、購買部門が証憑を受け取ったまま、環境部門や営業部門へ渡らないことがあります。

受入時には、次の順で確認します。

  1. 発注番号と納品書を照合する
  2. 品種、規格、数量、ロットを確認する
  3. 証書またはCFP文書の対象製品・数量と照合する
  4. 第三者検証や適用方法論の文書を保管する
  5. 使用する案件・製品・顧客へ数量を割り当てる
  6. Scope3または製品CFPの算定担当へ情報を渡す
  7. 顧客へ渡した情報と残量を記録する

Scope3と製品CFPへ同じ形で入れない

Scope3カテゴリー1の年次集計と、特定製品のCFPは集計単位が違います。受け取った削減証書やCFPをどちらへ、どの単位で使うかを算定担当者が決めます。

製品CFPへ使った数量と、組織のScope3で報告する数量の関係を説明できるようにします。異なる目的で同じデータを参照することと、同じ環境価値を重複して主張することは区別しなければなりません。

社外表示は承認フローを通す

「CO₂を何%削減」「低炭素」「GX対応」などの表現は、受け取った証憑だけで自由に作らず、根拠、比較対象、算定範囲、対象期間を明記できる状態にします。顧客指定の表示ルールや、自社の法務・品質・環境部門の承認を通します。

営業資料、製品ラベル、ウェブサイト、顧客提出書類では、求められる説明の深さが異なります。使用した文言と根拠文書を対応付けて保存すると、後日の問い合わせにも答えられます。

三部門で進める実務例

たとえば、加工部品メーカーが、顧客から「次期製品でグリーンスチールを使えるか」と質問された案件を考えます。

営業・環境担当は、顧客が求める目的を聞き取ります。Scope3の削減報告なのか、製品CFPの低減なのか、削減証書の提出なのかを明らかにします。購買担当は、対応できる供給者、方式、証憑、数量、納期、価格条件を調べます。設計・品質担当は、既存の規格・寸法・加工・検査条件を満たすか、代替承認が必要かを判断します。

三部門の回答を同じ案件票へ集めると、環境面だけ先に約束することを防げます。顧客へは、採用可否だけでなく、対応可能な数量、方式、証憑、技術承認の条件を分けて回答できます。

初回は一製品・一顧客・一期間に限定し、受入から証憑引継ぎまで試す方法もあります。運用できたら、対象品目や顧客を広げます。

見積依頼票に入れる項目

口頭で「グリーンスチールを希望」と伝えるだけでは、供給者ごとに前提の違う回答が返ってきます。見積依頼票は、少なくとも次の欄を持たせます。

記載する内容
案件使用製品、顧客、予定時期、担当部門
導入目的Scope3、製品CFP、顧客指定、環境表示など
環境条件適用ガイドライン、希望方式、必要証憑、検証条件
鋼材条件品種、規格、材質、寸法、数量
加工・品質加工内容、表面、検査、必要書類
供給条件希望納期、分納、納入場所、継続性
回答事項対応可否、代替案、前提、価格範囲、有効期限
引継ぎ証憑の受取者、数量管理、顧客への提供方法

すべての欄を埋めてから問い合わせる必要はありません。未確定欄を明示し、どの条件が供給可否を左右するかを確認できる形にします。

よくある失敗

呼称だけで比較する

同じ「グリーンスチール」でも、方法論、対象範囲、受取情報が異なる場合があります。商品名ではなく、方式と証憑を突き合わせます。

環境部門だけで選ぶ

規格・加工・品質・納期の確認が後になり、採用できないことがあります。設計、品質、購買を初期段階から入れます。

証書と現物を結び付けない

証書は受け取ったものの、どの発注・数量・製品に使ったか分からなくなる状態です。発注番号と数量残高で管理します。

初回から全量切替を前提にする

供給、加工、証憑の運用が未確認なら、限定導入で確認する方が手戻りを抑えられます。

表示文言を先に決める

削減率や低炭素の表現を先に作ると、根拠文書の範囲と合わない場合があります。証憑と算定結果を確認してから承認します。

まとめ

グリーンスチールの調達前には、導入目的、呼称・対象、GX価値の反映方式、証憑・検証、鋼材仕様、数量・納期・商流、受入後の運用という7項目を順に扱います。

環境条件だけでなく、鋼材として使える条件と、購入後に価値を引き継ぐ条件までそろえます。発注番号、納品数量、証書・CFP、使用案件を対応付け、調達・設計・品質・環境・営業が同じ情報を見られるようにすると、次回の調達にも再利用できます。

西日本鋼管株式会社の鉄鋼販売事業では、鉄鋼の調達・在庫・加工・品質管理・納品と、低炭素素材の導入条件を案内しています。品種・規格・加工・数量・納期・必要書類の対応範囲を確認する際の参考にできます。

参考情報