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CFP算定とは?必要なデータと進め方を初心者向けに解説
CFP(カーボンフットプリント)算定とは、製品やサービスのライフサイクルで生じる温室効果ガス排出量を集計し、CO₂相当量(CO₂e)に換算することです。
算定を始めるとき、最初に電力使用量や原材料の重量を集める必要はありません。先に決めるべきなのは「何のために算定するか」「どの製品を、どの単位で表すか」「どこからどこまでを対象にするか」です。この設計が曖昧なままでは、必要なデータが増え続けたり、算定結果を比較や改善に使えなかったりします。
初めてCFP算定を担当する方に向けて、算定前の決定事項、必要なデータ、計算の基本、実務で止まりやすい点まで順に解説します。
この記事の要点<br>CFP算定は、目的・対象製品・基準単位・算定範囲を決め、各工程の「活動量×排出係数」を合計して進めます。数字を出すことがゴールではなく、排出量の大きい工程を特定し、原材料・製造・物流などの改善判断へ使ってこそ意味があります。
CFP算定とは
CFPは「Carbon Footprint of Product」の略称です。経済産業省・環境省のガイドラインでは、製品・サービスのライフサイクルにおける温室効果ガス排出量をCO₂量に換算して示すものとされています。
対象となるライフサイクルには、原材料の調達、製造、物流、使用、廃棄・リサイクルなどがあります。ただし、すべての算定で必ず全工程を含めるとは限りません。取引先へ出荷するまでを対象にするのか、使用・廃棄まで含めるのかは、算定目的や採用するルールに沿って決めます。
2026年3月には、CFPの定量化に関する原則・要求事項・指針を規定するJIS Q 14067が制定されました。実際の算定では、このJISや経済産業省・環境省のガイドライン、対象製品に適用される製品別算定ルールなどと照合します。
CFPと会社全体の温室効果ガス排出量は、見る単位が異なります。会社全体や組織のバリューチェーン排出量を整理するScope1・2・3に対し、CFPは特定の製品・サービスを基準単位として算定します。
| 比較項目 | CFP | 組織のGHG排出量 |
|---|---|---|
| 対象 | 特定の製品・サービス | 会社・組織 |
| 基準 | 製品1個、1kg、1mなど | 対象組織・対象年度 |
| 主な用途 | 製品改善、顧客へのデータ提供、調達・表示 | 組織全体の排出管理、Scope1・2・3の開示 |
データを集める前に決める4つのこと
1.算定の目的
目的によって必要な精度、算定範囲、確認方法が変わります。社内で排出量の大きい工程を探すための試算と、取引先へ正式な製品データとして提出する算定では、求められる証拠や検証の水準が同じとは限りません。
まず、次のどれに使うのかを明確にします。
- 排出量の大きい工程を把握し、削減策を検討する
- 取引先からのCFP・一次データ提供依頼に対応する
- 製品や調達材料を比較するための判断材料にする
- 製品の環境情報として表示・開示する
- Scope3カテゴリー1など、組織側の算定に活用する
2.対象製品と基準単位
同じ製品名でも、仕様、製造拠点、原材料、対象期間が違えば排出量は変わります。「どの製品の、どの仕様を対象にするか」を特定し、結果を表す基準単位を決めます。
基準単位の例は「製品1個当たり」「製品1kg当たり」「鋼管1m当たり」などです。機能が異なる製品を単純に1個同士で比較すると誤解を招く場合があるため、何を同じ機能として比べるかも確認します。
3.システム境界
システム境界は、ライフサイクルのどの工程を算定に含めるかを示します。原材料調達から自社工場の出荷までなのか、納品、使用、廃棄・リサイクルまで含めるのかを、フロー図にして整理します。
対象外にする工程がある場合は、理由を記録します。後から算定結果を更新・比較できるよう、対象工程と対象外工程を曖昧にしないことが大切です。
4.算定ルールとデータ方針
適用できる製品別算定ルール、顧客指定のルール、社内基準があるかを押さえます。あわせて、どの項目で自社や仕入先の一次データを使い、どの項目でデータベース等の二次データを使うかを決めます。
一次データを入手できない項目があっても、直ちに算定できないとは限りません。適切な二次データや推計を使う場合は、出典、対象年、単位、推計方法を記録し、重要な項目から精度を高めていきます。

図:目的・対象・範囲・データ方針を決めてから、活動量と排出係数を対応させます。
CFP算定に必要なデータ
必要なデータは、製品のライフサイクルフローに沿って整理します。部署名ではなく工程別に並べると、抜けや二重計上を見つけやすくなります。
| 工程 | 主な活動量の例 | 主な取得元 |
|---|---|---|
| 原材料・購入品 | 材料の種類、重量、購入量 | 部品表、購買記録、仕入先情報 |
| 製造・加工 | 電力、燃料、副資材、歩留まり | 請求書、設備記録、生産実績 |
| 物流 | 輸送重量、距離、輸送手段 | 出荷記録、納品書、運送会社 |
| 廃棄・リサイクル | 廃棄物の種類、重量、処理方法 | マニフェスト、処理記録 |
| 使用段階 | 使用電力、燃料、使用期間など | 製品仕様、使用シナリオ |
すべての製品へ共通して使われる電力や燃料は、対象製品分を分ける必要があります。生産量、重量、稼働時間など、実態に合う基準で配分し、なぜその基準を採用したかを残します。
また、重量と購入金額、kWhとMJ、kmとトンキロなど、単位の混在にも注意が必要です。活動量と排出係数の単位が対応していなければ、計算式が正しくても結果は誤ります。
CFPの基本的な計算方法
各工程の排出量は、基本的に次の式で求めます。
活動量 × 排出係数 = 工程ごとのGHG排出量
たとえば原材料であれば使用重量、電力であれば使用量、輸送であれば重量と距離などが活動量です。そこへ対応する排出係数を掛け、工程ごとの排出量を求めます。最後に対象範囲内の排出量を合計し、製品1個や1kgなどの基準単位で表します。
計算表では、結果の数値だけでなく次の情報を同じ行で管理すると確認しやすくなります。
- 工程名と活動内容
- 活動量、単位、対象期間
- 排出係数、単位、出典、公開年
- 一次データか二次データか
- 推計や配分を行った場合の方法
- 計算結果と更新日
CFPが算出できたら、工程別の構成比を見ます。排出量が大きい工程は「ホットスポット」と呼ばれ、削減策を検討する優先候補になります。
製造業のCFP算定を具体的に考える
鋼材を調達し、切断や穴あけなどの加工を行い、部材として顧客へ出荷する製造業を例に考えてみます。
原材料工程では、対象製品に使った鋼管・鋼材、副資材、包装材などの重量を確認します。仕入先から対象材料のCFPや排出原単位を受け取れる場合は、その対象範囲、単位、年度が自社の算定条件と合うかを確認します。仕入先データがない場合は、使用する二次データと選定理由を記録します。
調達物流では、材料をどこから、どの輸送手段で、どれだけの重量を運んだかを整理します。複数の材料や製品をまとめて輸送している場合は、対象製品分をどの基準で配分するかを決めます。
製造・加工工程では、切断機、加工機、溶接機、集じん設備、照明などの電力・燃料が候補になります。製品ごとに直接計測できない共通設備は、生産数量、重量、加工時間、設備稼働時間など、実態を反映できる基準で配分します。どの基準が適切かは設備と生産方法によって変わるため、単に均等割りにせず、現場担当者と確認します。
歩留まりも重要です。同じ購入重量でも、製品になる重量と端材・スクラップになる重量の関係で、製品当たりの原材料投入量は変わります。端材の処理やリサイクルを算定上どのように扱うかは、採用するルールに沿って決めます。
出荷物流では、完成した製品の重量、輸送距離、トラックなどの輸送手段、積載条件を確認します。自社の出荷時点までを対象とする場合と、顧客への納品までを含める場合ではシステム境界が異なるため、同じ名称のCFPでも対象範囲を確認しなければなりません。
このように工程を分けると、「購買部門が持つ材料情報」「製造部門が持つ加工・エネルギー情報」「物流部門が持つ輸送情報」がつながります。算定担当者だけで全データを推測せず、各部門が確認できる一次情報と、推計が必要な箇所を分けて管理します。
データ精度は重要度に応じて段階的に高める
初回算定で、すべての工程を同じ精度にそろえようとすると、データ収集に時間がかかり、取り組みが止まることがあります。一方、入手しやすいデータだけで結果を出し、推計や対象外の条件を残さなければ、後から結果を再現できません。
まず全体を試算し、結果への影響が大きい工程を見つけます。そのうえで、重要な工程から一次データの取得、計測方法、配分基準を改善する進め方があります。
| 段階 | 取り組むこと | 記録すること |
|---|---|---|
| 初回の全体把握 | 入手可能な活動量と適切な二次データで全工程を整理 | 未取得項目、推計、対象外、出典 |
| 重要工程の確認 | 排出量が大きい工程と結果への影響を確認 | ホットスポットと改善候補 |
| データ改善 | 仕入先データ、実測値、製品別の配分へ置き換える | 変更理由、対象期間、旧結果との差 |
| 継続更新 | 同じ条件で定期的に再計算する | 算定版、更新日、変更した条件 |
たとえば原材料が大部分を占める製品では、事務所照明の計測精度を細かくするより、主要材料の重量や仕入先データを確認する方が、結果の信頼性と削減判断に与える影響が大きい場合があります。データ収集の負担ではなく、結果への重要度を基準に優先順位を決めます。
算定条件や排出係数を更新した場合は、以前の結果との差が実際の削減によるものか、計算条件の変更によるものかを分けて説明します。年度ごとの結果を比較するには、基準単位、システム境界、配分、排出係数の変更履歴が必要です。
CFP算定を継続できる社内体制
CFP算定は、環境部門だけで完結する作業ではありません。必要なデータは、購買、生産、設備、物流、経理、営業など複数の部門に分かれています。初回算定時に担当とデータの所在を整理すると、次回更新の負担を減らせます。
| 役割 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 算定責任者 | 目的、対象製品、ルール、システム境界、版管理 |
| 購買・調達 | 原材料、副資材、購入量、仕入先データ |
| 生産・設備 | 製造フロー、電力・燃料、稼働時間、歩留まり |
| 物流 | 輸送手段、重量、距離、積載・分納条件 |
| 営業・顧客対応 | 顧客が必要とする単位、範囲、提出形式、期限 |
担当者名だけでなく、「どの帳票・システムから、誰が、どの頻度で取得するか」を決めます。月次で取得できる情報と、年に一度しか更新されない排出係数を分けておくと、更新時期を管理しやすくなります。
また、顧客からCFPデータを求められた場合は、数値だけを渡さず、対象製品、基準単位、システム境界、算定期間、検証の有無を一緒に確認します。依頼側と算定側で前提が違うと、提出後に再計算が必要になることがあります。
算定報告書に残しておきたい項目
CFP算定の再現性を保つには、計算表と算定報告書を分けて考えます。計算表は活動量、排出係数、計算式を追跡するためのものです。算定報告書は、何をどの条件で算定し、結果をどのように使えるかを関係者へ説明する文書です。
算定報告書には、少なくとも次の内容を整理します。
- 算定の目的と想定する利用者
- 対象製品、仕様、製造拠点、対象期間
- 基準単位と製品の機能
- ライフサイクルフローとシステム境界
- 使用した一次データ・二次データと出典
- 配分、推計、カットオフを行った箇所と理由
- 工程別排出量と合計CFP
- データ品質、制約、結果を利用するときの注意
- 検証を実施した場合の対象と方法
- 算定版、作成日、更新履歴
報告書へ条件を残すことで、取引先から追加説明を求められたときや、翌年度に再算定するときに、変更点を確認できます。担当者が変わっても再現できる状態を目指します。
CFP算定の進め方
実務では、次の順序で進めると手戻りを減らせます。
- 目的と利用者を決める 社内改善、顧客回答、表示・開示など、結果の用途を明確にします。
- 対象製品・基準単位・期間を決める 製品仕様、製造拠点、対象期間を特定します。
- ライフサイクルフローとシステム境界を作る 原材料から廃棄・リサイクルまでの工程を並べ、対象範囲を決めます。
- 活動量と排出係数を収集する データの担当部門、出典、単位、不足項目を一覧にします。
- 計算・確認・報告書作成を行う 単位、配分、二重計上、計算式を確認し、条件と結果を文書化します。
- ホットスポットから削減策を検討する 原材料、製造、物流など、排出量と実行可能性の両面から優先順位を決めます。
最初からすべての製品を対象にする必要はありません。取引先からデータを求められている製品、売上や使用材料の影響が大きい製品、社内データを集めやすい製品などから試行し、算定方法と社内分担を固めて対象を広げる方法があります。
CFP算定で起こりやすい5つのつまずき
算定目的が途中で変わる
社内改善用に始めた簡易算定を、そのまま社外表示へ使おうとすると、データ品質や検証が不足することがあります。用途が変わった時点で、必要条件を見直します。
対象範囲が担当者ごとに違う
物流を含むか、廃棄を含むかなどの認識がそろっていないと、同じ製品でも結果を比較できません。フロー図と対象外工程を関係者で共有します。
取得できないデータを0にする
未取得と排出量0は異なります。データがない項目は、推計する、二次データを使う、影響を評価して対象外とするなど、判断と理由を記録します。
共通設備の配分根拠が残っていない
工場全体の電力や燃料を対象製品へ配分するときは、配分基準で結果が変わります。使用した基準と対象期間を残し、次回も同じ考え方で更新できるようにします。
数値を出して終わる
CFP算定で排出量が分かっても、品質、コスト、納期、供給安定性を無視した対策は実行できません。削減効果と調達・生産条件を一緒に評価します。
算定結果を改善へつなげる
CFPの工程別内訳を確認すると、原材料の影響が大きいのか、製造時のエネルギーが大きいのか、物流条件を見直す余地があるのかが分かります。
原材料がホットスポットであれば、仕入先から一次データを取得する、低炭素素材を検討する、歩留まりを改善するといった選択肢があります。物流であれば、輸送距離、輸送手段、積載、分納条件などが検討対象です。ただし、変更によって品質や納期へ影響が出ないかも確認します。
西日本鋼管株式会社は、CFP事業として必要なデータの整理、算定、報告に加え、鉄鋼販売商社としての知見を生かした低炭素素材や物流面の改善方法を提案しています。算定結果をレポートで終わらせず、供給可否、数量、納期、コストまで含めて実行可能な条件へ落とし込む点が特徴です。
CFP算定に関するよくある質問
最初からすべて一次データを集める必要がありますか
算定目的や適用ルールによります。一次データを得られない項目では二次データや推計を使うことがありますが、出典と対象範囲を記録し、排出量への影響が大きい項目から一次データへ置き換えると改善につながります。
CFP同士ならそのまま比較できますか
結果の単位、製品の機能、システム境界、使用データ、算定ルールが異なるCFPを、数値だけで単純比較することはできません。比較目的の場合は条件をそろえます。
第三者検証は必須ですか
求められる確認水準は、算定結果の用途や採用する制度・ルールによって異なります。社外表示、顧客提出、認証・調達要件などに使う場合は、必要な検証条件を算定開始前に確認します。
どの製品から始めればよいですか
顧客からCFPを求められている製品、排出量や取扱量への影響が大きい製品、データを集めやすい製品が候補です。1製品で算定方法を固めてから、類似製品へ広げる進め方もあります。
算定を始める前に決める最小範囲
CFP算定では、対象製品やデータが完全にそろっていない段階でも、目的と現在分かっている範囲を整理するところから始められます。
最初から完全な算定表を作る必要はありません。対象製品、算定目的、利用期限、現在保有している原材料・製造・物流データを整理し、不足データと代替方法を確認してから算定範囲を固定します。