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GXスチールの環境価値を証憑と鋼管調達へつなぐ流れを示すメインビジュアル

GXスチールとは?グリーンスチールとの違いと調達時の確認点

2026.06.08
グリーンスチール・GX

GXスチールを調べると、「グリーンスチール」「低炭素鋼材」「マスバランス」「製品CFP」といった言葉が並び、何を基準に選べばよいのか分かりにくいと感じる方も多いでしょう。とくに初めて低炭素素材を調達する場合、名称だけを見ても、自社が受け取れる環境情報や、その情報をどこで使えるのかまでは判断できません。

GXスチールは、日本鉄鋼連盟の説明では、鉄鋼メーカーによる温室効果ガス(GHG)の排出削減効果を特定の鉄鋼製品に反映したものです。現行のGXスチールガイドラインには「GXマスバランス方式」と「GXアロケーション方式」があり、受け取る資料と活用の考え方が異なります。

調達で重要なのは、どちらが一律に優れているかを決めることではありません。自社が必要としているのが、組織のScope 3カテゴリー1に関する削減説明なのか、製品単位のCFPなのか、顧客へ提出する根拠資料なのかを先に整理し、その目的に合う方式と証憑を確認することです。以下では、GXスチールの定義とグリーンスチールとの違いを整理したうえで、発注前に確認したい順序を初心者向けに解説します。

この記事の要点 GXスチールは名称だけで選ばず、①利用目的、②供給方式、③対象製品・数量・期間、④削減証書または製品CFP、⑤算定・主張への使用条件、⑥検証・二重計上防止、⑦通常の鋼材条件の順で確認します。

GXスチールとは、削減効果を特定の鉄鋼製品へ反映したもの

日本鉄鋼連盟は、GXスチールを「鉄鋼メーカーのGHG排出削減効果を特定の鉄鋼製品に反映したもの」と説明しています。ここでいう削減効果は、鉄鋼メーカーが脱炭素に向けた設備投資や操業改善などを進めることで生み出した環境価値です。その価値を、定められた方法により特定の製品へ反映し、必要な情報とともに需要家へ供給します。

この仕組みが必要とされる背景には、鉄鋼業の脱炭素化の難しさがあります。鉄鋼は社会や産業に欠かせない素材ですが、製造工程の転換には大規模な技術開発や設備投資が必要です。一方、環境価値を持つ鋼材も、用途や規格が同じであれば、外観だけで通常の鋼材と見分けられるとは限りません。そこで、削減効果や製品の排出量を算定し、証書やCFPなどの情報として見えるようにすることが重要になります。

なお、日本鉄鋼連盟は2025年10月、従来の「グリーンスチールに関するガイドライン」を「GXスチールガイドライン」へ名称変更し、従来のマスバランス方式に加えてアロケーション方式を示しました。古い解説ページや資料では旧名称や旧版のPDFが残っていることがあるため、調達条件を確認するときは、参照しているガイドラインの名称、版、発行日を確かめる必要があります。

グリーンスチール・GXスチール・低CFP鋼材は同じ意味ではない

「グリーンスチール」は、脱炭素や環境負荷低減に配慮した鋼材を広く表す言葉として使われています。しかし、資源エネルギー庁の2026年3月の解説では、グリーンスチールに明確な統一定義はなく、販売される内容も各社で異なるとされています。そのため、「グリーンスチールと書かれているから、必ず同じ算定方法・証憑・削減効果である」とは判断できません。

一方、GXスチールは、日本鉄鋼連盟のガイドラインに基づく供給方法と確認事項を持つ呼称です。また、「低CFP鋼材」は、製品単位で算定したカーボンフットプリントが比較対象より低い鋼材を指す場面で使われますが、何と比較して低いのか、算定範囲や基準単位が同じかを確認しなければ、数値を正しく比較できません。

呼称基本的な捉え方調達時に確認する中心
グリーンスチール環境負荷低減に配慮した鋼材を広く表す言葉。供給者により定義や方法が異なる供給者の定義、削減方法、対象、根拠資料
GXスチール鉄鋼メーカーのGHG削減効果を、ガイドラインに沿って特定の鉄鋼製品へ反映したものGXマスバランスかGXアロケーションか、証書・CFP、検証
低CFP鋼材製品単位のCFPが低いことを重視する呼び方算定範囲、基準単位、使用データ、比較条件、検証

この三つは重なる場合があります。たとえば、GXアロケーション方式によって低い製品CFPが示された鋼材が、供給者の商品体系ではグリーンスチールと呼ばれることも考えられます。しかし、言葉の重なりと、算定上の扱いが同じであることは別問題です。発注書や社内説明では、商品名だけでなく、方式、対象製品、環境価値量、受領資料を記録しておくと混同を防げます。

GXスチールには二つの供給方式がある

現行ガイドラインで示されているのは、GXマスバランス方式とGXアロケーション方式です。どちらも鉄鋼メーカーの削減効果を製品へ反映する方法ですが、「需要家が何を受け取るか」と「どの情報を算定に使うか」が異なります。

GXマスバランス方式は、削減実績を証書とともに配分する

GXマスバランス方式では、鉄鋼メーカーが組織内で生み出し、検証されたGHG削減実績を管理し、その一部をマスバランスの考え方で任意の鉄鋼製品へ割り当てます。割り当てられた製品は、削減証書とともに需要家へ供給されます。

ここで注意したいのは、証書に示された削減価値と、鋼材そのものの製品CFPを同じ数値として扱わないことです。日本鉄鋼連盟の説明では、需要家は削減証書を、組織レベルの上流排出、具体的にはScope 3カテゴリー1や、製品レベルの排出削減を主張する際に活用できます。ただし、実際にどの報告書、顧客提出資料、算定ルールで使えるかは、需要家側の算定方針や適用基準、証書の条件を確認する必要があります。

また、マスバランス方式は、割り当てられた個々の鋼材だけが物理的に別工程で製造されたことを意味するものではありません。組織が実現した削減効果を、定めた管理方法により特定製品へ結び付ける仕組みです。したがって、購入後の説明では「この鋼材の製造時排出量が証書の値だけ直接減った」と単純化せず、証書が表す内容と利用条件をそのまま確認することが大切です。

GXアロケーション方式は、削減価値を製品CFPへ反映する

GXアロケーション方式では、鉄鋼メーカーが保有する削減実績量の範囲内で、製品の排出量を配分し、低いCFPを持つ製品として供給します。需要家は、供給された製品に示されたCFPを、組織のScope 3カテゴリー1や、自社製品のCFP算定で使うことを検討できます。

この方式では、製品CFPが判断の中心になります。そのため、数値だけを受け取るのではなく、対象製品、基準単位、対象期間、算定範囲、参照したガイドライン、検証の有無を確認します。たとえば「鋼材1トン当たり」の値と「鋼管1本当たり」の値では単位が違い、そのまま比較できません。原料調達から製造までを対象にした値と、加工・輸送まで含む値も、範囲が異なれば同列に扱えません。

確認項目GXマスバランス方式GXアロケーション方式
中心となる情報組織が生み出した削減実績の割当て削減価値を反映した製品CFP
主な受領物対象製品に対応する削減証書、関連説明製品CFPと算定条件、関連説明
主な活用場面Scope 3カテゴリー1や製品レベルでの削減主張を検討Scope 3カテゴリー1や自社製品CFPへの数値利用を検討
最初に確認すること証書の対象、削減量、期間、使用条件、二重計上防止基準単位、算定範囲、使用データ、配分、検証
避けたい判断証書の削減量を、そのまま鋼材の製品CFPとみなす条件の違うCFPを数値の大小だけで比較する
GXマスバランス方式とGXアロケーション方式の受領資料・使い方・確認点を比較した図
図:利用目的から、GXマスバランス方式とGXアロケーション方式で受け取る情報・使い方・確認点を整理

自社が何に使うかで、必要な資料が変わる

GXスチールの問い合わせを始める前に、環境情報の利用目的を一文で書ける状態にしておくと、方式と証憑を選びやすくなります。代表的な目的は次の三つです。

  1. 自社の組織GHG排出量におけるScope 3カテゴリー1の削減説明へ使いたい
  2. 自社が製造する製品のCFP算定へ、購入した鋼材の排出量情報を組み込みたい
  3. 顧客提案や調達方針で、低炭素素材を採用した根拠を示したい

一つ目では、証書や製品CFPを、自社が採用するScope 3算定ルールでどのように扱えるかを環境・経理・保証担当と確認します。二つ目では、鋼材の製品CFPの単位と、自社の部品表や使用量を接続できることが必要です。三つ目では、顧客が求めているのが証書なのか、製品CFPなのか、第三者検証済みの情報なのかを先に聞き取ります。

同じGXスチールを購入しても、目的が違えば必要な資料は変わります。たとえば営業資料で「低炭素素材を採用」と説明するだけの案件と、顧客の製品CFPへ数値を組み込む案件では、求められる粒度が同じとは限りません。問い合わせ時に利用目的を共有せず、発注後に資料を追加で求めると、対象期間やロット、証書の名義、単位が合わない可能性があります。

調達時に確認したい7つのステップ

1.環境情報の利用目的と提出先を決める

最初に、「何のためにGXスチールを購入するのか」「誰へ何を提出するのか」を決めます。Scope 3の削減説明、自社製品のCFP、顧客への素材提案、社内調達基準など、目的を具体化します。提出先がある場合は、指定様式、対象年度、必要な検証水準も確認します。

2.GXマスバランスかGXアロケーションかを確認する

見積書や製品名にGXと書かれていても、方式が分からなければ受け取る情報を判断できません。供給者に方式を確認し、参照するGXスチールガイドラインの版も記録します。複数の方式を比較する場合は、価格だけでなく、自社目的に使える資料がそろうかを同じ表で比較します。

3.対象となる製品・数量・期間を合わせる

証書または製品CFPが、発注する鋼材の鋼種、規格、寸法、数量、納入期間と対応しているかを確認します。環境価値の対象数量と実際の購入数量が異なる場合、その差をどのように扱うかも必要です。発注単位が重量で、社内管理が本数の場合は、換算方法と根拠を残します。

4.受け取る証憑と記載項目を確認する

GXマスバランス方式では削減証書、GXアロケーション方式では製品CFPの資料が確認の中心です。資料名だけでなく、発行者、対象製品、数量、期間、環境価値量またはCFP、単位、算定方法、参照ガイドライン、検証情報、識別番号など、どの項目が記載されるかを発注前に確認します。

5.算定・主張に使える条件を社内で確認する

供給者から資料を受け取れることと、自社のあらゆる報告で無条件に使えることは同じではありません。自社が採用するGHG算定方針、CFPルール、顧客指定基準、保証業務の条件と照合します。「使用できるか分からない」場合は、発注前に環境担当、算定担当、監査・保証担当、提出先へ確認します。

6.検証と二重計上防止の考え方を確認する

GXスチールでは、削減実績や製品CFPの信頼性だけでなく、同じ環境価値が複数の製品や需要家へ重複して割り当てられない管理が欠かせません。第三者検証の対象が、削減プロジェクト、削減実績、配分管理、製品CFPのどこまでなのかを確認します。単に「第三者検証あり」と聞くだけでなく、検証範囲と検証日を把握します。

7.通常の鋼材条件と一体で発注判断する

GXスチールも、実際の製造や施工で使う鉄鋼製品です。環境情報だけでなく、鋼種、JIS等の規格、寸法、公差、表面、加工、検査、数量、納期、梱包、配送、価格を確認します。環境価値の条件を満たしても、必要な規格や納期に合わなければ実案件へ採用できません。環境担当と調達・設計・生産担当が別々に確認するのではなく、一つの発注条件表へまとめると抜けを防げます。

証憑と社内記録に残したい情報

受け取った証書やCFP資料は、PDFを保存するだけでは後から発注記録と結び付かないことがあります。少なくとも次の情報を、見積書、注文書、納品書、証憑の対応が分かる形で管理します。

  • 供給者名、製品名、鋼種、規格、寸法
  • 発注番号、納入時期、購入数量、環境価値の対象数量
  • GXマスバランスまたはGXアロケーションの方式
  • 証書番号またはCFP資料の識別情報
  • 削減量または製品CFPの値、単位、対象期間
  • 算定範囲、基準単位、参照ガイドライン、検証情報
  • 自社で使用した算定・報告・顧客提出資料
  • 使用量と残量を管理する必要がある場合の管理方法

情報を一か所へまとめておくと、年度をまたいだScope 3集計、顧客からの照会、第三者保証、製品CFPの更新時に追跡しやすくなります。担当者の記憶だけに頼らず、「どの購入分に、どの環境情報を使ったか」をたどれる状態にすることが大切です。

GXスチールで誤解しやすい5つのポイント

「グリーンスチール」と書かれていれば条件は同じ

グリーンスチールは広く使われる呼称で、供給者により定義や方法が異なります。方式、対象、算定範囲、証憑を確認せず、名称だけで同等と判断しないようにします。

証書の削減量と製品CFPは同じ数値である

削減証書は削減実績を割り当てた環境価値を示し、製品CFPは定めた範囲で製品の排出量を算定したものです。意味と単位を確認し、同じ欄へ無条件に入力しないようにします。

GXスチールなら機械的性質の確認は不要である

GXという環境属性だけでは、用途に必要な鋼種・規格・寸法・加工条件は決まりません。設計・品質上の要求事項は、通常の鋼材調達と同様に確認します。西日本鋼管株式会社のNNK-GXパイプについては、公式ページで通常製品と同等の品質・特性が案内されていますが、個別用途への適合は発注条件ごとに確認が必要です。

受け取った資料はすべての開示制度でそのまま使える

算定・開示・顧客提出のルールにより、利用できるデータや証書の条件は異なります。提出先の指定、算定年度、検証要件と照合し、不明点は制度運営者や保証担当へ確認します。

環境担当だけで選定を完了できる

環境情報が適切でも、規格、加工、数量、納期、価格が案件条件に合わなければ採用できません。環境・調達・設計・生産・営業の関係者が、同じ条件表を見て判断します。

NNK-GXパイプで確認できること

西日本鋼管株式会社の公式サイトでは、「NNK-GXパイプ」を、GXスチールを使用し、製品のCO₂排出量を見える化した環境配慮型低炭素パイプとして紹介しています。通常製品と同等の品質・特性を確保しながら、環境配慮の取り組みを製品単位で伝えられること、製造時の活動量を管理してCO₂排出量を見える化することが掲載されています。

また、算定についてはISO 14040:2006、ISO 14044:2006、SuMPO監修のガイドライン等に基づくこと、対象は同社が販売するGXスチールを使用したパイプであることが案内されています。低炭素素材の提案やCO₂情報の提出を求められる場面で、製品と環境情報を一体で検討するための選択肢です。

ただし、公式ページの概要だけで、すべての案件における供給可否や証憑の内容が確定するわけではありません。検討する際は、必要な鋼種・規格・寸法・加工・数量・納期とともに、利用目的、必要なCFPの単位・範囲、提出先の条件を共有してください。

西日本鋼管株式会社の鉄鋼販売事業では、鋼材供給に加えて、顧客の課題を共有し、コスト・品質面を踏まえた材料提案を行っています。NNK-GXパイプの製品情報と合わせて確認すると、環境情報と通常の鋼管調達条件を同じ相談の中で整理できます。

比較条件をそろえるための確認項目

初回相談では、専門用語を完全に理解している必要はありません。次の情報が分かる範囲でそろっていれば、確認すべき方式と資料を絞りやすくなります。

  • 使用用途と最終製品
  • 必要な鋼種、規格、寸法、加工内容
  • 必要数量、納入場所、希望時期
  • GXスチールを検討する理由
  • Scope 3、製品CFP、顧客提案など環境情報の利用目的
  • 顧客や社内から指定されている資料、単位、算定範囲
  • 第三者検証や証書に関する指定
  • 比較している通常材・低炭素材の条件

GXスチールの調達では、「環境価値を買うこと」と「必要な鋼管を安定して調達すること」を切り離せません。利用目的、方式、証憑、鋼材条件を順に整理すれば、名称や数値だけに迷わず、自社の説明責任と現場条件の両方に合う選択肢を検討できます。

比較表には、鋼材の仕様、環境価値の方式、対象数量、証憑、利用目的を同じ行に記録します。未決定事項は空欄にせず「確認中」と示すと、通常材とGXスチールの条件差を後から追跡できます。

参考情報